製品別収益性分析 〜人材不足時代の高付加価値製品事業への集中〜 その③

その②に続いて、エンジニアのリソースアロケーションと収益性の話です。

では、単純な例を挙げてみましょう。会社全体のエンジニアのリソースを100人と想定します。(最初に問題提起したように、人材不足の今はリソースを増やすことは出来ないという前提です)

ここにAとBという2つの事業があります。それぞれ年間の売上は50億円、会社全体の売上高は100億円です。AとBはマーケットの規模、将来の成長性の予測などはほぼ同じですが、収益性が異なります。Aの平均粗利益率30%、Bは25%です。販管費は両方とも15%で差異がありません。

さて会社としてはどちらの事業の拡販をするべきでしょう?そう、当たり前ですが答えはAです。

通常であればこのままAの拡販に向けての戦略の話に進むのが、“必要であればいつでも人材を確保出来た時代の“ 一般的な流れです。

今回は、ディシジョンメイクの前に、これをリソースの観点からもチェックしてみましょう。

Aは製造原価に占める原材料比率がBと比べて低いのですが、1億円分売上げるのに必要なエンジニアのリソースは 『18人月』必要となります。つまり計算上は1.5人のエンジニアが一年間フルで作業をすることになります。

Aの年間売上高は50億円ですので、これを達成するには1.5(人) X 50(億円)、理論上は75人のエンジニアが必要となります。

一方Bは、Aに比べて原材料費比率が高い代わりに、1億円を売上げるのに必要なエンジニアが 『6人月』だけ、つまり年間1億円を売上げるのに0.5人、同様に計算すると0.5(人) X 50(億円)、とAの1/3の25人のエンジニアのリソースで済みます。

このように、現在はA事業に75人、B事業に25人で計100人のエンジニアにより、計100億円の売上を計上しています。

なお現在は、50億円X 30% (A) = 15億円と、50億円 X 25%(B) = 12.5億円、合計27.5億円の粗利益を計上することができています。

ところがどうでしょう?粗利益率が高いからと言って単純にA事業を伸ばす戦略を組んでしまえば、極端な話、必要なエンジニアのリソースをBから借りてくるか、Aの売上を先延ばしにするかの選択肢を迫られてしまいます。

仮にBの売上を犠牲にしてでもAの拡販をするというディシジョンをした場合、AはBの3倍のリソースを必要とするため、追加となる売上はBの3分の1しか計上できず、全体の粗利益も当然減ってしまいます。

粗利益の計算:
50億円 X 1/3 X 30% = 5億円
< 50億円 X 25% = 12.5億円

このように、7.5億円の粗利益と約33億円の売上を失ってしまいます。

一方、これをB事業にフォーカスするという判断をしたら収益性はどうなるでしょう。

仮にBを50%拡販するとの目標を挙げると、50億円の50%、25億円に対して12.5人のエンジニアが追加で必要となります。これをAのエンジニアを引っ張ってくることで達成しようとすると、Aの売上は約8億円犠牲になりますが、

B : (50億円 + 25億円) X 25% = 約19億円
A : (50億円 – 8億円) X 30% = 約12億円

と、会社全体の粗利益は合計31億円になり、差し引き3億円の増加、売上も117億円と17億円の増加となります。

もちろん、現実にこんなに単純な図式を描く訳でもなく、ある事業を犠牲にすれば供給責任や長期契約などの問題も出てくることもあるでしょう。またこれはエンジニアの経験値を無視した机上の計算ですので、そう簡単にAからBへ配置転換をする訳にもいきません。

しかし考え方として、売上や粗利益率だけでなく、この時代にはエンジニアのリソースを重要なクライテリアとして考慮する必要もあるということはご理解いただけたのではないかと思います。

さて、では上記のリソースのパフォーマンスを売上や粗利益のように『簡単に比較できる指標』は無いでしょうか?という事で本題のVR/hの算出方法の話に入ります。

が、それは次のコラム “その④“ で。