製品別収益性分析 〜人材不足時代の高付加価値製品事業への集中〜 その④

その③では、製造業での事業別の収益性分析の際には『エンジニアのリソースが昨今の人材不足の時代には重要なクライテリアとなり得る』という理由を具体的な例を挙げて説明しました。

今回は、それぞれの事業がどれだけエンジニアのワークロードを消費しているかを具体的に測る指標 “エンジニアの時間当たりの付加価値(VR/h)“ の算出方法について話したいと思います。

まず最初に考えなければならないのは、事業を『どのような括りにするか』ということです。既に社内で事業部として認識しているものを活用するのも良いでしょうし、もし “あやしい” 事業があれば、その収益性を浮き立たせるために独自にFP&Aの視点で区分けするのも良いでしょう。ただし、独自に設定する場合は予めマネジメントの合意を取り付けておきましょう。裸にされて困る事業もあるかもしれませんので(笑)

次に取り掛からなければならないのは『事業別のP&L』を作成することです。事業別のP&Lを既に作成している場合はそれを活用しても良いでしょう。しかし、事業別には “売上と粗利益“ までしか把握していないような場合は、販管費の各事業へのアロケーション方法から考える必要があります。

販管費のアロケーションは、主に以下を基準にしておけば、おおよそ現実に近い事業別のP&Lを作成できると思います。

・販売直接費 (輸送費、販売コミッション、ロイヤルティ、保管料、など) … その事業に直接的に関わる費用ですし、ほとんどが売上に連動するコストですので、簡易的なアロケーションではなく、出来るだけ個別の事業別に集計しましょう。(もちろん、売上割戻などがあればそれも同様に)

・販売費(固定費)(主に営業部門の人件費と交通費などで構成されている場合が多いと思います)…もし、コストセンターと事業が『一対一』あるいは『複数対一』の場合は、そのままその“コストセンターのコストを事業の販売費“ とすれば良いので簡単です。

しかし、『一対複数』あるいは『複数対複数』、つまりひとつ(あるいは複数の)コストセンターに対して “複数の事業“ が関わっている場合にはコストを適切な配付キーでアロケーションする必要が出てきます。

(アロケーションのキーの設定方法については今回のポイントではありませんし、話すと長くなってしまうので概略のみとし、詳細は次回以降のコラムで説明することとします(汗))

主な販売費のアロケーションキーとして以下のようなものが挙げられます。

その事業に対する…
・個人別のワークロード(%)
・受注伝票の数
・見積書の数
・アクティブな顧客の数
・上記のミックス

あえて売上や受注の金額ベースでのアロケーションを推奨しないのは、実際に掛かるコストと売上金額は必ずしも連動しないからです。例えば一件1千万円と1億円の売上を比べた場合、営業部門で掛かるコストが金額通り10倍違うということは無く、まぁ多少の差はあるとしても『手間』という意味では金額よりも件数の方が現実に近いからです。それでも売上を考慮したい場合は金額をベースにしたものをミックスしても構いません。

・一般管理費… 管理部門の人件費、オフィスの賃料(自社ビルの場合は減価償却費とそのメンテナンスコスト)、それとIT関連のコストが、おそらくどの会社でも金額的に経費のベスト3に入ってくると思います。

ですので、できればその3つが適切に配付できる、例えば以下のようなキーを使うと良いでしょう。
・各事業の『販売費(固定費)』の金額
・各事業に関わる営業部門の人数
・各事業で使用しているオフィスのスペース
・各事業の売上

手間を惜しまないなら、コストの種類やコストセンターによって配布キーを変える方法も良いでしょう。例えば人件費や人事部門のコストは人数、オフィス賃料や光熱費は占有スペース、法務部門のコストは契約書の成約件数やパテントの申請件数など、ITはPCの台数やシステムごとのユーザーの数などなど。

上記に加え『係数』を考慮するという方法もあります。例えば、製造部門を抱える事業は非製造部門より管理費が掛かるので1.5倍にするであるとか。

さて、事業別の売上と粗利益に対して上記の販管費のアロケーションを行なうことで事業別の営業利益(あるいはEBIT)まで算出することができました。

さて、これで計算元となる数字の基礎はOKです。あとはエンジニアの工数の把握さえできればVA/hの算出が可能です。

工数の把握の作業の前に、ここまでの段階でどの事業の収益が良いのか悪いのかをある程度把握しておきましょう。あくまでP&Lから見た収益性です。

勘違いしてはいけないのは、事業別のP&L ≠ 独立した会社のP&L という事です。つまり事業別では利益が出ているからと言って、その事業が独立しても利益が出るとは限らないという事です。他の部門とのコラボレーションの元で成り立っている事業もあるでしょうし、シェアードサービスを活用しているからコストセーブが出来ているかもしれないし、ブランド力やだけで売上が伸びている事業もあるでしょう。

と、このまま続けると、また長くなってしまいそうなので、工数の把握については次回のコラムで!