【M&A】その時FP&Aは何をすれば良いのか?その4「FP&Aの方便力」

下町ロケットの方はM&Aの話はどこかに飛んでしまい、何やら経営者の個人的な思い入れによる暴走で会社の将来が決まりそうな勢いですね。ま、結局そうはならないんでしょうが(笑)

さて、DDの時のFP&Aとしての取り組み姿勢の話の続きです。DDの建前は第三者による公正な価格の評価となっていますが、過去何年かの財務実績は誰が評価してもある程度同レベルの価値を導きだせるでしょうが、将来の見通しから算出されるキャッシュフローの話となるとそうは簡単にいきません。

定量的だけでなく定性的な視点からも、あらゆる面からロジカルな理屈を導き、会社の将来価値を算出しなければなりません。特に定性的な面では、会社側の説明の仕方によって導き出される印象が大きく変わってきます。

特にマーケットの動向や自社製品の強み弱み、主要なカスタマーの購買計画の特徴、主要購買先の特性などなど、会社側でしか分からない情報は山ほどあります。これらをどのようにDDの算定に反映させるかは、言って見れば会社側の説明に依存するところが大きいと言えます。

例えば『我々の主要製品のAは、これこれこんな強みがあるから、来年以降は確実に成長すると見込んでいます。ほら、過去数年も毎年数パーセントづつ、順調に売上を伸ばしているでしょう?』と言えば、『なるほど、ではこの成長曲線で将来の見込みを描いているのも納得出来ます』となるか、『我々の主要製品のAは、競合製品とのシェアの奪い合いに苦戦し、本来ならマーケットの急激な成長に比例した成長率を示さなければならないところ、毎年数パーセントの伸び率しかありません。このままでは頭打ちのマーケット成長率に対してシェアの獲得が難しくなりますので、売上の増加は見込めません。』と言えば、『ではここはコンサバティブに、成長率は0として算出しましょう』という結論になるかもしれません。

世の中の情報から得られるマーケットの動向なんてよほどのマスプロダクトでなければあてにはなりませんし、まして競合製品の強みや弱みなんてコンサルが知る由はありません。誤解していただきたくないのは、嘘をついて数字を操作しなさいと言っているわけではなく、言い方ひとつで見通しの印象は大きく変わると言う事を承知の上でDDに臨んで欲しいと言う事です。

では、FP&Aとしてどのような定性的な説明をすれば良いのか、それが前回のコラムに書いた、『評価は低く』と言う事に繋がります。

FP&Aのあなたはどちら寄りで評価しますか?もちろん自己評価を高くして自社を高く買ってもらいたいですよね?心情的に自分の働いている会社の価値を低く評価はしたくないものです。

自社の価値を高く評価したいという気持ちは、FP&Aという立場でなくとも自然と湧き上がって来るものだと思います。しかし冷静に考えてみてください。これからその “自社“ は売られるのです。つまり “自社“ は買い手のモノになり、我々社員も買い手の元で働くことになるのです。

“自社“の価値を高くして喜ぶのは誰でしょう? それは売り手であり、その時既に我々は買い手の元で仕事をしているのです。

つまり我々がいくら頑張って会社を高く評価したところで、全く恩恵を受けられないのです。そればかりか、高く評価することで買い手は当然その分のリターンを期待します。つまり期待は事業のターゲットに変わり、売却後に大きなプレッシャーが我々にかかってくるはずです。大げさに言えば高く評価することは『天に唾する』行為になってしまうのです。

こんな事を書いてしまえば、売り手である現在のオーナーの意図に反することになります。だって彼らは出来るだけ高く売りたいと思っているハズですから。だからもちろん、そんな意図をあえてDD中に言う必要も無いし、無理にコンサルに低く評価するように誘導する必要もありません。FP&Aとして高く評価してもらいたいと言う気持ちを抑えて、あくまでコンサバティブに、そして公正に評価してもらうように進めれば良いのです。(出来る範囲で(笑))

M&Aの発表後から既に我々FP&Aは買い手の為に働かなければならないのです。

次回はM&Aの発表後のFP&Aの日常業務に与える影響を書いてみたいと思います。