fp&aと管理会計と財務会計 〜 管理会計の魔法 その1 〜|FP&A Manager FP&Aマネージャー専門メディア

それなりの規模を有している外資系の会社では、財務会計部門とは別に管理会計やFP&Aの組織が独立している場合が(特にヨーロッパ系では)多いのですが、時にその役割分担について議論を要することがあります。

管理会計と財務会計、ザックリ言えば会社の内部向けの会計と社外向けの会計という役割分担になるのですが、そこに ”必ずしもこうあるべき” という決まりはありません。事実多くの部分でオーバーラップしてますから、あまり厳密に分けてしまってもお互いの為になりません。リソースと各スタッフのスキルを考慮して適宜分担を振り分け、協力体制を築く事が大切です。

ただ、管理会計と財務会計を独立させることで、お互いの牽制機能を働かせている面もありますので、そのあたりのさじ加減も管理監督者には求められるところです。

さて、管理会計は基本的には財務会計の結果の上に成り立つものです。財務会計は数値情報などをベースに《事実》を適法に表すもの、管理会計は財務会計のデータを元に事象の分析を行ったり、将来の予測と方向性、改善目標などについて、マネジメントのディシジョンメイクの為の施策を考察し、またそのような機会を継続的に提供し、会社の業績向上の為に財務面から貢献していく事がその主な役割となります。

財務会計の上に成り立っているとはいえ、管理会計には財務会計の方向性を決めていく役割を求められる場合もあります。

代表的なものとしては ”月次決算” です。通常、財務会計では、年次、半期、四半期決算は求められても、月次決算や週次決算を求められることはありません。しかし多くの場合、継続的にビジネスを展開して行く為には財務状況を少なくとも ”月次単位” で把握する必要があります。タイムリーに把握する事で社内の財務に関するタイムリーなディシジョンメイクに貢献できます。

一つ例をあげると、財務会計の世界では、例えば棚卸が確定するまでは売上原価は確定しません。【期首在庫 + 当期仕入高(或いは材料費・労務費・経費) – 期末棚卸高】という、簿記の3級あたりで習ったやつです。そう、これで十分なんです。財務諸表には正しい棚卸高と売上原価が報告されますので財務会計上では何の問題もありません。

しかし、どうでしょう? この方式だと『棚卸』をするまでは損益が確定しません。年に一度しか棚卸をしなければ、損益を把握するのは年に一度になってしまいます。

ビジネスは毎日動いています。”今の損益” が把握できていない状態、言わば ”今お財布にいくら入っているかがわからない状況” で次に何を買うのかの判断は出来ません。

だから財務状況の把握、つまり決算のタイミングは出来るだけ短い単位に行う事が理想的です。(とは言っても日次決算はやり過ぎで、その複雑な仕組みが故にかえって結果が不透明になり、本末顛倒となる可能性が大きいと考えます)

現実的には、月次決算と月中に行う月次予想が最も理想的な締めのタイミングとなるでしょう。

閑話休題。しかし、月次決算の為に毎月棚卸をする(まして製造業では仕掛品の計算もしなければなりません)というのも、なかなか面倒でもあり、現場作業を一時的にストップしなければならず、多くの工数もかかってしまうため、現実的ではありません。そこで管理会計の登場となります。

棚卸を行なわずに売上原価を把握するために、代表的であり最も多く採用されているものが標準原価により棚卸資産を把握する方法です。標準原価は、棚卸資産を個別あるいはグループ分けし、一定の法則で予測した価額でグループ単位の在庫を評価する事で、上記の簿記の公式を使用せず、在庫の払出高だけでその都度売上原価を(やろうと思えば)デイリーでも把握する事が出来てしまうという、魔法のような手段です(笑)。

もっとも、そんな魔法を使ってしまえば、当然見返りは発生するもので、FP&Aで最も厄介な原価差異分析という作業が待ち受けています。つまり、標準原価で想定した価額と実際原価との差異分析です。

原価差異分析は、通常は月次のレポーティングが終わった後にじっくり行います。もしそこで実際原価との間に大きな差異があることが判明した場合には標準原価の見直しをしなければならないかもしれません。(差異分析については別のコラムで述べるとして、ここでは省略します)

そして童話でもアニメでも魔法はいつしか解けると相場は決まっています。棚卸という現実に直面した時にその魔法と現実のギャップが小さいほど優秀な管理会計と言えます。また、魔法を使ったからと言って年次の棚卸作業が避けられる訳でもありませんので、玉手箱をあけたら、”あらびっくり” ということが無いようにしましょう。

しかし、そんな厄介な分析作業を差し引いたとしても、月次決算は有意義なモノで、得られる事はたくさんあります。FP&Aにとって重要なことは、この短期決算の結果をみてどう動くかです。比較となるのは計画値です。計画値との差異分析を元に今後の展開を予測したり、問題があれば早期に解決策を考えていく、ここにFP&Aの大きなバリューがあります。

このように、財務会計で把握したデータを元に管理会計に必要なデータを算出し、その差異分析を定期的に繰り返していく事で管理会計の精度も上がってきます。また、差異分析によって財務会計の計算ミスなどを見つけることもありますので、お互いがチェックする体制にもなっています。

さて、コラムの管理者からなるべく ”短期決戦” ならぬ ”短期決算” でコラムの回数を増やしたいと言われているのですが、書いているうちについつい話が長くなるので、中途半端ながらここで一度区切り、続きは次のコラムでつぶやくとします。(笑)

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