家庭のFP&A 〜 家計簿にも複式簿記を その2 〜|FP&A Manager FP&Aマネージャー専門メディア

今回もFP&Aとは少し離れて柔らかい話『家計簿にも複式簿記を』の続きを。

前回、その1では、” 折角手間暇かけるんだからもう少し効果的なものにしましょう” と、従来の単式簿記形式をやめて複式簿記で家計簿をつけてみる提案をしました。

その2ではその具体例を、前回登場した寸劇家族を使い、少し年月を遡り、最初に車を買った結婚当初の6年前にまでタイムスリップし、その後の6年間の毎年の家計簿を単式簿記と複式簿記とで比べてみたいと思います。

新婚当初のこの夫婦、これからの生活の為に、諸費用込みで300万円の車を買いました。頭金は2人の貯金300万円から150万円支出し、残りの150万円はディーラーキャンペーンの無金利ローンを利用して3年で返済することにしました。妻は専業主婦だけど夫の手取り年収は500万円ほどなので無理な金額ではありません。

ではこれを例に、単式簿記と複式簿記での結果を比較してみます。ただし、あらゆる変動要素はここでは一切排除して説明します。

1年目
(単位は万円)
【単式簿記】
結婚当初預金 300
収入 500
生活費 -400
車の頭金 -150
ローンの返済 -50
現金残高 200

年末で当初と比べて100万円も現金が減りました。『ちょっと無理な買い物をしたかな? 』

【複式簿記】
*自家用車の耐用年数(償却期間)を5年と見込みました。

《貸借対照表》
【貸借対照表は、現在の資産や負債の状況を表すものです】

(結婚当初)
現金 300
資本金 300

2人の資産は預金残高の合計、300万円です。これを ”資本” にして、これから ”家族の経営” をしていきます。

(年末)
現金 200
自家用車 240
借入金 100
資本金 300
剰余金 40

・車という資産と、借入金という負債の認識が出来ました。
・今なら車が100万円以上で売れれば、借金を返してもこれ以上現金が減る事はありません。

《損益計算書》
【損益計算書は、期間損益を把握するためのものです。(この例では1年間)】

収入の部 500
支出の部
生活費 -400
車の減価償却費 – 60
当期損益 40

・今年は40万円の ”利益” です。
・40万円は未処分利益にして来年以降のリスクに備えてそのままキープすることにします。

早くも一年目で、帳簿を見た感想が違います。単式簿記では、”ちょっとやばいかな” という感想に対して、複式簿記では僅かながら ”利益” が出たという認識です。

加えて複式簿記では資産と負債がそれぞれいくらあるかの認識も出来たので、車の価値と借入金の早期返済の計画も考えることができます。

2年目
【単式簿記】
年初預金 200
収入 500
生活費 -400
ローンの返済 -50
現金残高 250

年末で現金が昨年より50万円増えましたが、2年も経ってるのにまだ当初の金額に戻っていません。
『何やってるんだか』

【複式簿記】
《貸借対照表》
(年末)
現金 250
自家用車 180
借入金 50
資本金 300
剰余金 80

・借金はあと50万円。『繰上げ返済してもいいけど、無金利だから意味ないか』

《損益計算書》
収入の部 500
支出の部
生活費 -400
車の減価償却費 – 60
当期損益 40

・今年も40万円の利益です。収入が去年と同じなので当然です。
・40万円は今年も未処分利益のまま置いておきます。

2年目も感想はだいぶ異なります。

単式簿記では全体像が見えないので、この調子でいいのかどうかわかりません。複式簿記では昨年と収入も生活費も同じだったので、損得も同じになりました。当たり前ですが。そして、80万円の将来の収入減や突然の損失に備えることが出来たと認識出来ました。少し安心できます。

3年目
【単式簿記】
年初預金 250
収入 500
生活費 -400
ローンの返済 -50
現金残高 300

年末で現金が昨年より50万円増えて、3年目にしてやっと当初の金額に戻りました。
『長かった。もうしばらく車は買うのはやめよう』

【複式簿記】
《貸借対照表》
(年末)
現金 300
自家用車 120
借入金 0
資本金 300
剰余金 120

『借金が無くなった!』

《損益計算書》
収入の部 500
支出の部
生活費 -400
車の減価償却費 – 60
当期損益 40

・今年も40万円の利益です。
・3年間で貯まった120万円は今年も未処分利益のまま置いておきます。

3年目になると、複式簿記では借金完済がはっきりと見えますし、将来の損失に備える剰余金が120万円あるので、これからの収支計画が明るくなると想定できます。
4年目
【単式簿記】
年初預金 300
収入 500
生活費 -400
ローンの返済 0
現金残高 400

年末で現金が当初より100万円増えました。
『でもまだ車を買い替える余裕は無いな』

【複式簿記】
《貸借対照表》
(年末)
現金 400
自家用車 60
借入金 0
資本金 300
剰余金 160

《損益計算書》
収入の部 500
支出の部
生活費 -400
車の減価償却費 – 60
当期損益 40

・今年も40万円の利益です。
『4年間で貯まった160万円の剰余金があるから、そろそろ車を買い替える計画を立てようかな』

4目になると、複式簿記では将来の損失に備える剰余金160万円が見えますので、これを使って車を買い替える計画が立てられるようになりました。
5年目
【単式簿記】
年初預金 400
収入 500
生活費 -400
ローンの返済 0
現金残高 500

預金残高が500万円になりました。
『次の車検で車を買い替えようかな?でもまた新婚当初の預金残高には戻りたく無いから、差額は借金しようか』

【複式簿記】
《貸借対照表》
(年末)
現金 500
自家用車 0
借入金 0
資本金 300
剰余金 200

《損益計算書》
収入の部 500
支出の部
生活費 -400
車の減価償却費 – 60
当期損益 40

・今年も40万円の利益です。
『剰余金が200万円あるから、半分残して車を買い替えよう』

複式簿記では昨年から考えていた欲しかった新型車を買う計画がスムーズに立てられました。
さて6年目にこの夫婦は、今の車を100万円で下取りして新しい車を300万円で買う事になりました。車は5年間で償却していましたので下取車の帳簿上の価値はゼロ。つまりここでも利益が出たのです。

【単式簿記】
年初預金 500
収入 500
生活費 -400
下取金 100
新しい車代 -300
現金残高 400

【複式簿記】
《貸借対照表》
(年末)
現金 400
自家用車 240
借入金 0
資本金 300
剰余金 340

《損益計算書》
収入の部 500
支出の部
生活費 -400
車の減価償却費 – 60
車の売却益 100
当期損益 140

どうですか? 単式簿記では 『今の車を下取りして新しい車を買ったけど、下取りが良かったから結果として100万円現金が増えた』程度の感想ですが、複式簿記では経緯と結果まで見ることができます。

このように、複式簿記は家計簿の ”みえる化” を実現し、また、それにより家計の現在の経済状況や将来の支出の見通しを立てることにも役立てることができるのです。

もちろん、複式簿記を採用したからと言って現金が増えるわけではありませんが、現実がよく見えるか見えないかでは、帳簿をつけた意味合いが大きく異なります。

期間損益の把握と ”みえる化” が可能になると、本当は何が家計を圧迫しているか、或いはどこを改善したらより現金が増えるのか、将来の支出に備えて、どこにどれだけ支出すれば良いかが見えてくるようになります。

”カイゼン活動は、みえる化から” です。

例えばこの夫婦の場合、今は毎年40万円の利益が出ています。でもこれから子供の教育費が発生する時期にもなりますから、仮に毎年20万円の教育費を見込んだとすると、買い替える車を200万円にすれば、毎年の償却費負担が60万円から40万円になり、毎年40万円の利益をキープする事が出来る、という計算も可能になります。

期間損益の考えが無いと、どれだけ支出をセーブしたら良いのかの指標がわかりません。極端な話、単式簿記だと『これから教育費が掛かるから車なんか買い替えている場合じゃない、とにかく貯金しなきゃ』という結論になるかもしれません。

上記の寸劇夫婦の例は変動要素を一切排除して、ごくごく単純な例でシミュレーションしましたが、実際の家計簿はもっともっと複雑です。収入も生活費も変動するでしょうし、生活費の分類分けも必要です。さらに住宅の購入なんて入ってきたら35年ローンの把握も出てくるかもしれません。学資保険や満期払戻金のある保険金の処理も将来と今の支出の関係を複雑にする要素のひとつです。また、より正確な数字を求める場合は、年末に資産価値の見直し(減損処理)も必要になるでしょう。

それと、今回の例は常に利益が出ていますが、当然これが損失の場合もあります。そんな時も複式簿記なら早めに兆候が見えてきますから、転ばぬ先の杖ともなり得ます。

どうですか? だいぶ複式簿記化に興味が湧いてきたのでは?

さて、冒頭でも言いましたが、簿記に明るくない人に勧めるにはアプリの力が必要です。実際のアプリで、どの様な仕組みを作ればいいんでしょうか?

それは次のコラムで。

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