東芝の粉飾決算にみる、FP&Aとしての減損処理の関わりと監査法人対応 の続き の続きです|FP&A Manager FP&Aマネージャー専門メディア

『血のバレンタイン』騒動の話の続きですが、これを書いているそばから、東芝の今期の決算が債務超過になることはほぼ確定的で、東証2部降格、あるいは上場廃止の確率が高くなってきたというニュースが流れてきました。まぁ想像通りのストーリーで、個人的には2部降格では済まされないと予測しています。

さて、債務超過に至るまでには兆候があったはずで、それは ”受注損失引当金に始まる負の連鎖” から、固定資産の減損処理を引き起こしたのではないかと説明しました。そして第3の処理、のれん(営業権)の償却へと続くのです。

既に受注損失引当金で10年先までの損失を処理し、おまけに有形固定資産の減損処理までやって、キレイサッパリぜい肉をそぎ落としきったつもりでしたが、残念ながらまだありました。(泣)

過去の有報を詳しく見れば正確な金額は分かるのでしょうが、東芝のバランスシートには、WH社取得の際に計上した ”のれん(営業権)” が計上されていたはずです。

のれんは、簡単に言えば買収会社の帳簿価額(正確には公正価値)と実際に買収時に支払った金額の差額で、無形固定資産に計上されます。まれに、買収金額の方が安い場合もあります(“負ののれん” と言います)が、買収価格には帳簿価額に加え、将来産み出されるであろう収益の見込み額の一部も含めるため、通常は資産として計上されます。ちなみに “のれん” は ”Goodwill” ですが、負ののれんは ”Badwill”と言って区別します(笑) 。Badwillが発生した場合は負債には計上せずに一時の収益として処理します。

世の中、企業買収(M&A)を繰り返して巨大化して行く企業は数多くありますが、東芝も例外では無く、2006年のWH社の買収時には6千数百万円もの大金をつぎ込んだとあります。今回、”WH社に絡む減損処理による損失” とありますので、その多くはこの買収時に計上した ”のれん” が締めているのではないかと思います。

その “のれん”の減損処理ですが、どこまで減損するかは、基本的には将来の事業計画に拠るところが大きくなります。

のれんは、J-GAAPでは20年以内で均等償却とありますが、IFRSではその価値が著しく損なわれた場合のみ、減損処理を行うことになっていますので、今回の受注損失引当金を計上するまではIFRS上では買収当時ののれん金額がマルマル残っていたことになります。

この無形固定資産、” 将来、収益を生み出せない資産” と判断されれば、最悪の場合は100%減損ということもあり得ます。だから管理会計の責任者が将来の事業計画をどう描くかは大変重要でもあり、ある意味会社の将来を左右する話なので重責でもあります。

減損処理をしたからと言ってもキャッシュが減るわけではありませんから、すぐに会社が倒産する事は無いでしょうが、上場廃止となれば資金調達は困難となり、それは会社が衰退の一途を辿ることになることを意味します。

FP&Aとしてこの課題にどう対峙するのか。超難題ですが、腕の見せ所でもあります。簡単に言えば、”将来一定の収益が見込める事業計画案” を作成し、その価値がのれんの価値を上回ることが理論上証明できれば減損を回避できます。監査法人がそれを認めるという条件付きですが。裏を返せば、認められなければ会社を窮地に追い込むことになります。

しかし、監査法人も昨今あちこちで発生した不正会計を見抜けなかった事件で相当叩かれているため、そうそう簡単に ”ハイそうですか” とは言ってくれません。事業計画には理論的な説明とそれを証明できる資料を揃えておかなければ、決して首を縦に振ることはありません。つまり ”絵に描いた餅” を見せるだけでは無く、餅が出来上がるまでの過程を理論立てて説明する必要があるのです。

例えば、昨年まで赤字だった原発関連事業が、いくら受注損失引当金を計上しているとは言え、急に黒字になる計画を、何の根拠も無く立てても『それは現実味が無い計画でしょう』と一蹴されてアウトです。

でもどうでしょう、例えば工期の短い原発の需要が今後見込めるとします。もちろんそれが過去数年間のマーケットのトレンドで証明できるとしましょう。そして、工期が短かくかつ安全対策の済んだプラント開発と設計がほぼ終わっていて、その原価計算とマーケット価格から一定の粗利益が確保できる見込みがある事が証明できれば、少なくとも数年先からの売上げが通常の粗利益率で達成できる見込みを立てられるかもしれません。そうすれば数年先までは現在抱えるバックオーダーでギリギリ凌いだとしても、数年先からは徐々に利益を見込めるシナリオが描ける可能性もあります。そうなれば或いはそれが事業計画として認められるかもしれません。

決して “飛び抜けて明るい将来像” を描いてはダメです。何とかギリギリ実現可能なライン且つ減損を回避できるラインを見極めて計画を立てなければ、後で実績との乖離に苦しむことになります。一度事業計画が承認されれば、あとは実績が計画通り、或いは計画より上回っている限り原則として減損は回避できます。

監査法人、つまり公認会計士は監査のプロですが、事業法人の会計のプロではありません。監査六法や監査手順には詳しくても事業計画作成に関しては素人同然ですから、会社側、つまりFP&Aに主導権があるのです。

誤魔化してまで計画を立てるのは、倫理にもとりますが、ある程度のリーズナブルな可能性を追求した事業計画を立てるぶんには監査法人も否定は出来ないはずです。ですからFP&Aの腕次第では危機を、つまり減損処理を回避できる可能性もあります。ただし、一時的にはという但し書き付きですが。

当然、事業計画は年度別、或いは四半期別に作成することを求めらます。例えば10年先までの計画を立てたとしましょう。監査法人は必ずその事業計画と実績がかけ離れていないかを翌期からトラッキングを開始します。そしてそれが計画通りに進んでいなければ、FP&Aは嘘つき扱い、会社は減損処理を強いられることになります。残念ながら。

しかし、減損を一年先延ばしに出来ただけでもチャンスが生まれる可能性はあります。その1年間にどれだけ復活の道筋を付けられるか。まさに、執行猶予付きの実刑の判決を受けたようなものですから。

東芝は、一昨年の不正会計問題で執行猶予を与えられたにも拘らず、事業再生の道筋を立てられなかったばかりか、さらなる不祥事を暴かれてしまいました。残念ながら復活への道筋は閉ざされ、実刑が言い渡されることでしょう。

– 後書き –
東芝が実際に監査法人とどのようなやり取りをしたかは分かりませんが、数年前に不正会計を行なったいわゆる ”前科者” には相当の厳しい態度で対応したことでしょう。ましてや、お決まりの ”E&Yが監査法人の時に不正会計が発覚、その後はPWCにバトンタッチ” というパターンです。PWCも相当構えて監査に臨んだことでしょう。だから発覚したのか、それともE&Yが見逃していたのか、自らが自白したのかは分かりませんが、会計処理をバカにした会社が会計処理に仕返しされてしまいました。残念です。

会計監査でも税務でもそうですが、彼らが帳簿全てをチェックすることなど到底出来ません。ですから当然、一通りのお決まりのチェックポイントを監査したあとは、その過程で ”ちょっと怪しいな” と思ったポイントに突っ込んできます。

彼らもプロですから、そのあたりにはハナが効きます。そしてその怪しいポイントについては徹底的に資料と説明を求められることになります。財務担当者として、ルーティンポイントで何も問題が起こらないようにすることは当然ですが、”怪しいポイントを見つけ出させ無い” ような対策を取っておくことも需要です。そのためには何をすれば良いか?

それはまた、別のコラムで。

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