東芝の粉飾決算にみる、FP&Aとしての減損処理の関わりと監査法人対応|FP&A Manager FP&Aマネージャー専門メディア

東芝の粉飾決算にみる、FP&Aとしての減損処理の関わりと監査法人対応

〔家計簿の複式簿記化の話の続きの前に、ちょっと寄り道してホットな話題を〕

『血のバレンタイン』

2017年2月14日、東芝はアメリカの原発関連子会社に対し7,000万円を超える減損処理を行うことを発表しました。これは今期の決算が約5,000万円の赤字、さらに約2,000万円債務超過となり、当然、このままでは上場廃止の道を辿ることになる事を意味します。(しかし、半導体部門をスピンオフしてそれを回避する予定とのこと)

何年かおきにやって来る大手企業の粉飾決算のスキャンダル。ついに113年の歴史を持ち19万人の連結従業員を抱える東芝が、減損処理という決定打により、名門の歴史を閉じようとしています。

「会計処理を誤ったからといって、電気機器具の製造等という原告(東芝)の主たる事業自体への信用も毀損されているとはいえない」

これは、2015年に同社が歴代3社長と2人のCFOを不正な会計処理を行った罪で訴えた裁判での、かつての社長である西田氏の発言です。

” 会計処理如きで我々が永年培ってきた事業そのものが揺るぐことは無い”

と、胸を張って言いたかったのでしょう。誰かが拍手でもしてくれるとでも思ったのでしょうか。

私には、”アホを通り越して悲しい開き直りの発言” にしか見えません。会計帳簿の重要性に対する認識が上場企業の社長として決定的に欠落しています。こんなやつが19万人の会社のトップだったと思うと、整理ポジションの会社になった会社で働き続ける従業員もうかばれないでしょう。(整理ポジションになるかどうかはわかりませんが)

今回の債務超過は、そもそも東芝が損失処理を先延ばしたが為に生み出したと言っても過言ではありません。これは単に “損失の後出しか先出しか” の問題ではありません。”キズが浅いうちに治療すればいろいろな治療の選択肢があったのに、末期がんと宣告され、終末期医療の道しか残されなかった” ということと同じです。

このFP&Aのコラムでも何度か触れましたが、悪い兆候を見つけたら、FP&Aとして早期にリスクヘッジと回避あるいはオフセットできる財務的な対策を考える事が重要です。膿みを隠し続ければのちに腫れて、大手術が必要になるのは子供の頃から親に耳にタコが出来るほど聞かされてきたことでしょう(笑)

このタコ…いや社長、そればかりかパソコン事業では、”バイセル取引” という、古典的な粉飾決算の手法まで使い、決算を良く見せていました。膿みを隠すだけでは無く、派手な化粧までして自分を良く見せようとしていたんです。 幼稚極まりない。

会計帳簿は、究極を言えば、企業の財務状況をありのままに見せる事を目的にしています。特に上場会社は、ディスクロージャーとも呼ばれることからもわかるように、全てを包み隠さず開示しなければ、そもそも株主の信頼など得られる訳がありません。

裁判でCFOはきっとこう言ったんでしょう。『19万人の従業員を守る為に必要だった』『会計処理は監査法人との解釈の違い』とでも。守りたいなら正直に膿みを出せば良かったし『解釈の違い』などというものを正当な理由として言い訳しているようでは、そもそもCFO失格です。” あなたそれを承認してるでしょ?”

事業に対する志の低い彼ら役員にしてみれば如何に自分の任期中に業績を上げるかということに集中するが常で、それが成功すれば多額の退職金が待ち受けているという、まぁ、官僚の天下り問題と争うほど醜い仕組みになっているからそれも仕方が無いのかもしれません。

さて、前置きが長くなりましたが、FP&Aと今回の事件の関わりです。冒頭で触れた減損処理とその決定に至るまでの監査法人とのやり取りには、通常、財務部門だけでなく管理会計部門もインボルブされます。減損処理では会社の将来の収益性を見極めることが要求されるため、FP&Aの作成するプランがその判断の基準として採用されるからです。

ではそもそも減損処理(減損会計)とはどのようなものなのでしょうか? wikiによると、こう定義されています。

減損会計(げんそんかいけい、impairment accounting)とは、資産の収益性が低下して投資額の回収が見込めなくなった場合、当該資産の帳簿価額にその価値の下落を反映させる手続きをいう。減損処理ともいう。

とかく企業の決算発表におけるビッグサプライズとして、毎度毎度、定番の原因として使われるこの言葉、なぜ四半期決算ではその兆候がなかったのに、期末決算で突然桁違いの損失が出てしまうのでしょう? それはその決定までの過程に深く関わりがあります。

今回の東芝のニュースをちょっと聞きかじっただけでは正確なことは分かりませんが、おそらくWH社の固定資産とのれんの両方に対して減損処理がされたのでは無いかと想像します。そもそも減損に至ったのは、” 311の原発事故の影響で原発の安全性を高める処置が必要になったから” とあります。

プロジェクトビジネスにおいて、主力製品において、何らかの原因で受注後に見積り製造原価よりも高いコストになることが想定される場合(今回の場合は安全性の確保)、且つそれを価格改定でカバーできない場合(同、電力会社との値上げ交渉が失敗)、多くは “負の連鎖” が始まることに繋がります。この負の連鎖は以下のようにして起こり得ます。

受注損失引当金 → 固定資産の減損処理 → のれんの減損処理 → 債務超過 → ✖️(想像にお任せします)

では、今回の東芝の減損がどのような過程で起きてしまったか(想像ですが)、何故、減損処理は突然やってくるのか。

それは次のコラムで。